療育音楽・音楽療法への42年の道のり―① 赤い糸でつながってきて

「障がい児者に音楽で心身の活性化、生きる歓びを・・・」

当協会の創立者、赤星建彦は劇場やレコード会社専属の作曲、編曲の仕事をする中で、楽器の教則本の制作も多く手掛けていました。これが後に障がい児者との繫がりになります。教本といってもドラム、ギター、ベース、オカリナなどで、当時は最先端のソノシートやカセットの解説・音源付、有名アーティスト(ドラム・ジミー竹内、つのだ☆ひろ、成毛滋など)が指導していました。

いくつかの教本制作の中で、「レッツプレイギター」という赤星建彦自身が解説と演奏、監修は浜口庫之助氏、初歩者に分かりやすい教本でした。当時、朝日新聞系列のTV局NET(現テレビ朝日)の関連会社の依頼で制作を致しました。ギターは人気があり誰でも演奏をしたい楽器ですが、3つのコード(C、F、G7)のFの左指が抑えづらく、挫折する人が多いことで知られています。やさしく通過出来る(弾ける)ように工夫して、歌(漕げよマイケル、聖者の行進、朝日のあたる家、イエスタデイなど)を歌いながら弾き語りできる曲を集めたメソッドでした。

発売時に埼玉県浦和の書店でキャンペーンが行われ、ギターも貸し出して行われました。そこに参加していた女性から1年後に連絡がありました。病院内でギターの演奏会を行うので、先生(赤星建彦)に是非来てほしいとのことでした。埼玉県蓮田にある国立の病院で、筋ジストロフィという難病で入院している子ども達にギターを教えたのは病棟の保母さんでした。“これなら子どもたちにも出来る”と指導、練習の成果を見ていただきたかった、と話されました。筋ジストロフィという難病は知っていましたが、多くの子どもたちが入院している病棟は初めてのことでした。赤星会長は少年たちの一生懸命に演奏する音を今まで聞いたことがなかった清々しい音、と表現、心に強く残ったと述べていました。同行の筆者、職員も同じ思いでした。「すごいなー、頑張っているな、きれいな音で弾いていたねー」終了後の感想を交わす時に赤い糸が心の中で結ばれました。神経内科の担当医から「赤星さん、先生の教本を使って毎日練習するようになって、やらない子と比べて病気の進行(筋肉の衰え)が、何もやってない人と比べて遅く、喧嘩やもめ事も減っている」とのお話を伺いました。そのような事例を含め、障がいのある子どもたちの生活全般やリハビリにも役立っている、という医師からのアドバイスに赤い糸が繋がりました。

そこで音楽療法関連の翻訳本を探しました。しかし、心理療法関連の書で身体機能につながる本は見当たらなかったため、それなら自分で始めようと、障がい者との音楽(障がいに応じた楽器を使ってリハビリに役立てる)を指導しながら、一人ひとりの状態を考え、医師の協力を得て始めました。基本はグループで行うこと、つまりみんなと一緒に楽しく続けられるというように、赤い糸はさらに繫がっていきます。